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   < コラム >  非弁の要件を勉強して非弁を回避せよ!
                              →非弁とされない為の予防策

  平成22年に 離婚や不倫が専門の行政書士S氏が依頼者の夫の不倫相手に慰謝料請求の内容証明郵便
を送付したことで、大阪弁護士会から非弁で告発される事件がありましたが、結局起訴猶予処分で終わりま
した。   一方、S氏は相手方弁護士を告訴し、大阪弁護士会に対し損害賠償請求訴訟を起こしていました
が、告訴は受理されず、民事訴訟は1審、2審(平成25年5月29日判決)とも非弁が認定され請求棄却となって
います。
  しかし、S氏は刑事罰こそ免れたものの、この騒動の為に行政書士業務を停止して他の営業で生計を立て
ざるを得なくなっています。  一体、S氏の何が非弁だったのでしょうか。  本判決では内容証明郵便業務
でも非弁になることがあると云っているのです。    S氏は非弁の要件について正確に知っていればこのよ
うな事態を避けられたかもしれません。  とはいえ、非弁に関するまとまった本がある訳でもなく、非弁と非弁
でないケースの分かれ目が分かり難いというのが本音ではないでしょうか。   一番の最善策は今のところサ
イトから情報を集めてコツコツと勉強して行くことしかないというのが現状です。

 さて、上記 2審判決の判決理由には、「女性から依頼された業務は弁護士法に定められた「『法律事件』に関
するもので、行政書士もそれを認識していた。   内容証明の作成にあたって法律的知見などに基づいて
主体的に女性を指導しており、行政書士に許される書類作成のための相談業務の範囲を大きく
逸脱し弁
護士法72条に違反している。  内容証明それ自体が新たな事件性を帯びた権利義務関係を生じさせ
るものである
」ということが書かれているそうです。

  さて、S氏はサイト上で自分が行った事務及び処理の経緯について弁明していますが、それを整理しますと
以下の通りです。
イ 内縁の夫の不倫相手(以下相手方という)に慰謝料を請求したい旨の相談を女性(以下依頼者という)から
  受ける。
ロ 内容証明郵便で160万円の慰謝料を相手方に請求して和解を勧めた。
   (しかし、S氏に拠れば慰謝料の算定業務は行なっていないという)
ハ 相手方から慰謝料を分割して支払いたい旨及び公証証書作成に同意する旨の回答が依頼者宛に届いた。
ニ 当事者間で合意があったと考え、公証証書作成の委任状を双方に送付した。
  この際、公証証書原案に記載した慰謝料160万円の5%である8万円を報酬として依頼者から受領した。
ホ 相手方から委任状の返送がないので、公証証書の作成を進めるか否かを質問する書面を相手方に送付した。
ヘ 相手方弁護士からS氏の一連の行為が示談交渉にあたり弁護士法違反だとする警告文書が届いた。

 上記のS氏が述べた経緯でよく分からないのは、公証証書原案の慰謝料額160万円は当事者が交渉して合意
した金額なのか、相手方は本当に160万円の支払いに同意しているのかということです。  
 何れにしても、S氏が示談交渉を行った形跡は認められないように思えます。
  尤も、裁判所は「S氏が主体的に女性を指導しており」とI云っているだけで、S氏が相手方と示談交渉したとは
云っていません。
  実は7年前になりますが、「相談に来た多重債務者に報酬を得る目的で自己破産の効果を説明し手続きを
指導し申立てをさせた」
として非弁とされ、執行猶予付有罪となった行政書士がいました。
  S氏は示談交渉をしていないとしても、慰謝料160万円の5%を報酬として請求しています。  つまり、慰謝料の
金額に応じて報酬が上下するとすれば単なる文書作成に関する相談料ではないと見れなくもありません。

 では、これは何に対する成功報酬なのでしょうか。
裁判所は、S氏が「内容証明の作成にあたって法律的知見などに基づいて主体的に女性を指導しており」と
述べている通り、慰謝料の算定に関し依頼者を指導した(つまりS氏が主体となって慰謝料を160万円と算定しその
額での和解を主導した)と見ているのです。
 どういうことかと云うと、その指導は単なる文書作成に関する相談業務ではなくて、法律事件について法律的見解
を述べる「鑑定」業務に関わる相談業務であって、8万円はその報酬だと裁判所が判断したということです。

 行政書士は当事者で合意した内容に基づき示談書を代理作成することが出来ます。    しかし、示談が合意に
達していない段階では法的紛議の生じる可能性が完全に払拭されていないので関与を避けるべきであると前々から
云われていたことです。

  この判決は、金額の合意前に行政書士が依頼者を指導し主体的に慰謝料を算定して内容証明郵便で請求する
ことに関する相談業務が非弁になる、と云っているのです。    S氏の相談業務が非弁である為に、内容証明郵便
業務が事件性を帯びた権利義務を生じさせたものになっているのです。
行政書士が内容証明郵便で慰謝料を請求出来るのは、当事者で金額の合意が纏まってからだと云っているのです。

  しかし、判決は相談業務が非弁であればその内容で作成した内容証明郵便も非弁になる云っているだけで、それ
は限定的なものです。
  そもそも内容証明郵便業務は、弁護士法72条の「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この
限りでない」の規定により本条の適用から外れること、及び、行政書士法第1条の2で行政書士業務として法定する権利
義務又は事実証明に関する文書に内容証明郵便が該当することから、上記のような非弁の相談に付随して作成され
るものでない限り、行政書士が何ら臆することなく内容証明郵便を作成出来ることに些かの変化もないのです。

                                                                2013.9.7
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