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             裁判所をうまく使いこなす方法!
                     〜 法は自ら助くる者を助く 〜


 和解が無効となる場合とは


<和解契約が無効になる場合>


  民法第695条は「和解は、当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約すること
によって、効力を生じる」と規定しています。

  → この「争い」(あらそい)については、和解の自主的紛争解決機能、その法律関係確定契約としての特性に着目して、
    紛争解決のために「たとい真実に反してもという意思であらたに権利関係を確定する実益があれば足りるとし、
    権利関係の存否、体様、範囲に関する争いのみならず、権利関係の不明確、さらには権利実現の不安全等の場合も
    ひろく含まれるとする有力説があります。



                      
  和解とは当事者間で自主的に法律関係を確定する契約であり、和解内容と真実の法律関係とが異なる
場合にも当事者は和解内容に拘束されますから、当事者間に新たな法律関係を創設する効力があります。
                         

 さて和解も契約である以上、原則として錯誤の規定(民法第95条)が適用されます。 


しかし、和解の創設的効力との関係で通説・判例は適用の範囲を以下の通りに考えています。

1 合意した事項自体に錯誤があった時 →民法第95条は適用されません。

   当事者間で争われ、法律関係確定の合意がなされた事項自体に錯誤があっても和解契約は無効と
 なりません。

2 争いの対象とされた事項の前提ないし基礎として当事者によって疑いなき事実として予定
 されていた事項に錯誤があった時
それ以外の事項に錯誤があった時  

   →民法第95条が適用されます。

     
3 原因関係が不法であった場合  →民法第95条が適用されます。

   →  不法で無効な法律関係を基礎としてその支払義務の存在を確定する意味をもつ和解は、
     不法で無効とされます。   
      基礎たる法律関係から来る実質的不法性は、当事者間の和解という合意によって払拭され
     得るものではないからです。

  <例> 賭博債務を減額して支払うことにした和解につき「小切手金支払請求は公序良俗違反で許されず、
    その支払目的での和解も同じく公序良俗違反で無効とされるべきである」
                                      (最高裁昭和46年4月9日判決)



<示談後に予期せぬ後遺症が発症した場合は>

 交通事故などで当事者が話し合って損害賠償額を決めることを示談(じだん)といいますが、れも民法上
の和解と解されます。   示談時に予想出来なかった後発損害についても判例は加害者の損害賠償
責任を認めています。

「 権利放棄条項は示談当時予想していた損害のみについてのものであって、不測の再手術や後遺症
 などその後に発生した損害についての請求権まで放棄した趣旨と解するのは当事者の合理的意思
 に合致しない」(最高裁昭和43年3月15日判決)


<裁判上の和解と錯誤>


1 裁判上の和解には、訴訟上の和解(訴訟係属中にする和解)と即決和解(起訴前に簡易裁判所でする
 和解 )があります。

  和解調書の記載は判決と同一の効力を持ちます(民訴法203条)。

   
2 裁判上の和解は当事者間の私法行為としての和解契約と、裁判所に対する訴訟行為との二つの
 要素を持ちます。
                       
  判例に拠れば、和解により代物弁済として引渡すことを約した本件ジャムが粗悪品であったケースで、
 「和解に関与した訴訟代理人の意思表示にはその重要な部分に錯誤があったのであるから、本件和解
 は要素の錯誤により無効であり実質的確定力を有しない」と判示しています(最高裁昭和33年6月14日判決)。


  「和解により負った債務の不履行があるときは民法の規定により解除することができる」 
                                      (大審院大正9年7月1日判決)。



<調停と錯誤>


  調停には民事調停法に基づく調停や家事調停法に基づく調停などがあり、調停調書の記載は裁判上
の和解と同一の効力を持ちます。
  
  調停の前提をなす当事者間の合意は和解としての性質を持ちますから、無効、取消、解除について
は裁判上の和解の場合と同様に扱われます


  判例では、工務店が注文主に建物の検査済証を引渡せば工事代金を支払うという調停が成立した後
で、工事が建物確認申請の要らない用途変更であったと分かったケースで、「検査済証が存在するものと
錯誤した結果、上記のような調停をしたのであるから、調停は錯誤により無効であり、注文主は工事代金
を支払え」と判示しています(東京地裁平成16年11月26日判決)。


<調停に代わる決定と錯誤>


 「  民事調停法第17条の調停に代わる決定の実質は調停解決案の提示であって、当事者らが異議の
  申立をしなかったときはそこに合意の存在が擬制され、調停に代わる決定 に準じる性質を有する
  ものと解される。 ・・・・異議の申立をしなかったことにつき、要素の錯誤などの実体法上の瑕疵が
  認められ場合には、当事者は再審によらずに当該決定の無効を主張することが出来ると解する
  のが相当である」 (和歌山地裁新宮支部平成18年5月25日判決)


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